2014年4月9日水曜日

2014年度 河野ゼミ ガイダンス資料

皆さん、こんにちは。

今回は、2014年度の河野ゼミ ガイダンス資料について紹介します。
この資料は、2週間くらいの時間を掛けて、かなり気合を入れて作ったものです。未発表の研究テーマに関する部分は公開できませんが、それ以外はすべてオープンに紹介します。

1. はじめに

河野ゼミでは、『ソーシャルメディアとその社会的影響』をテーマに研究を進めている[1][2]。その基本的な方針は、社会的課題をシステムで解決することである[3]。システムを実現するための技術はあくまでも手段であって、真に解決すべき課題は社会の中に存在するものである。したがって、我々の問題意識は、地域社会や環境、人間関係の中にある。

これらの社会的課題は、様々な要因が密接に絡み合った複雑な状態となる場合が多く、システムだけでは解決できないことがある。このような課題を一人で解決することは到底できないため、関わる人達の役割分担や運用面など、体制作りまで含めた研究課題となる。このようなテーマを掲げる最も大きな理由は、研究活動を通じて互いに切磋琢磨することで、「自分で未来を切り拓くことのできる人材」への成長を期待するためである。自分自身の抱える課題と活動の目的を適合させ、自身の活動を促進して欲しい。

ゼミは3、4年生合同のディスカッション、学年別のサブゼミをそれぞれ週1回行う。ディスカッションとは、毎週4~5名程度の発表者が研究発表を行い、ゼミ全員で議論を行う形式のゼミである。ここでの議論、報告をもとにシステム開発、調査、論文執筆などを行う。サブゼミでは、各自研究の進捗、今後の予定などを教員、他のゼミ生に報告する。サブゼミでの報告をもとにディスカッション資料を作成することになる。

2. 研究方針

2.1. 到達目標

上記理念のもと、河野ゼミでは研究成果学会発表論文投稿)を挙げることを最優先とし、研究活動を進める。新規性の高い研究テーマに取り組み、成果が見られる学生には積極的に学会発表を経験させる。研究活動を通じて、情報収集・発信力、論理的思考力、問題解決力、プレゼンテーション能力などを養う。

2.2. ゼミ訓

河野ゼミの目指すべき人物像とその心構えとして『河野ゼミ訓』を以下に示す。

<河野ゼミ訓>
1.ソーシャルであること
 周りの人達と協力して、活動をうまく進められること。ひとりでできないことをみんなでやる。ソーシャルメディアが使えることではない。
2.自分の頭で考えること
 まずは自分の頭で考えること。安易に答えを教えてもらおうとしない。自分で考えないと成長しない。
3. 行動すること
 頭で考えるだけではなく、実際に行動を起こして初めて意味がある。行動の結果は選ぶことはできないが、どう行動するかは自分で選択することができる。とにかく行動すること。
4. スキルを磨くこと
 心構えだけでなく、自分の強みとしてのスキルを磨くこと。プログラミング、デザイン、ライティング、プロジェクトマネジメント、リサーチなど、いろいろある。
5. 誠実であること
 相手に対しても自分に対しても誠実であること。相手のことを理解してから、初めて自分のことも理解される。お天道様に顔向けできないことはしない。

上記のうち、すべて心掛けて欲しいところではあるが、最初は1つだけでも意識して欲しい。



2.3. 卒論スケジュール

ゼミ配属から卒論提出までの流れを以下に示す。

<3年次>
 1. 4月:ゼミ配属
 2. 5月:ディスカッションで初めての発表
   ※関連論文、書籍などを読んで内容を発表する(適宜、ディスカッションでは文献紹介を行うこと)
 3. 8月:夏休み、ゼミ合宿
   ※夏休みもできるだけゼミ室に来て研究を進めること
   ※研究を進める絶好のチャンスなので、ここでどれだけ頑張れるかが勝負!
 4. 10月:研究テーマの決定
 5. 11月:卒論中間発表・計画発表会
   ※3年生は卒論の計画発表を行う(複数のゼミ合同での発表会)
 6. 1月:最終レポートの提出
   ※卒論の序章となる内容

<4年次>
 7. 4月:いよいよ最終年度
   ※卒論と就活を並行して頑張る(どちらか一方だけというのはあり得ない)
 8. 8月:夏休み、ゼミ合宿
   ※研究の追い込み時期
 9. 10月:学生生活も残り半年、悔いのないように研究を進める
10. 11月:卒論中間発表・計画発表会
   ※4年生は卒論の中間発表を行う
   ※この時点で基本的にシステム開発調査は終わっていること
   ※教員からOKをもらった学生は、卒論を執筆してよい
   ※NGの場合は、OKをもらえるまで研究を進める
11. 12月:卒論初稿提出
   ※卒論が一通り完成した状態であること
   ※この時点で内容がほとんどない場合は留年もう1年頑張る
12. 1月下旬:卒論提出
   ※教員からOKをもらった学生は、卒論発表の準備を進める
   ※NGの場合は、卒論再提出期限まで心を入れ替えて頑張る(当然春休みはない)
13. 2月上旬:卒論発表会
   ※無事に乗り越えた人は卒業まで新生活の準備
14. 3月上旬:卒論再提出期限
   ※教員からOKをもらった学生は、卒論再発表の準備を進める
   ※NGの場合は留年もう1年頑張る
15. 3月下旬:卒業式
   ※みんなで無事に卒業できること

河野ゼミでは、研究テーマをシステム開発系、社会調査系の2つに大別している。そこで、4年次における系統別の卒論提出までの具体的な目標(マイルストーン)を図1に示す。研究テーマによっては、調査と開発の両方が必要な場合がある。特に3年生は、両方の切り口で1年以上じっくりと時間を掛けて取り組めれば、よい成果が期待できると考える。

図1. 系統別のマイルストーン

3. ディスカッション

3.1. ディスカッションの意義

ゼミ活動の中でも特に、ディスカッションは重要である。自分の研究成果を発表するだけでなく、他者の発表を聞いてその研究内容を理解し議論することは、互いの研究をより進展させる上で非常に重要な役割を担っている。ディスカッションで活発な議論を展開することで、新しいアイディアが出てきたり、他者の研究成果を自分の研究に活かしたり、自分自身の知恵が深まったりする。この時間は、必然的に他者の発表を聞く機会の方が多いことから、その時間をいかに活用できるかで自分の成長に大きく影響する。

そこで、ディスカッションの目的を以下に示す。
(1) 研究活動の報告(研究の目的、現在の進捗、今後の課題など)
(2) 研究で得られた成果・知見の共有(最新動向、サービス展開、調査結果など)
(3) 文書作成能力の向上
(4) プレゼンテーション能力の向上

まず(1)について、自分の研究を他者に説明することにより、自分自身の中で研究の意義や課題などの理解を一層深めることができる。そのため、資料作成と発表の際は、他者に理解してもらえることを常に意識する。次に(2)について、研究で得られた成果や知見などをゼミ内で共有することで、それらが『河野ゼミの知識』として蓄積される。ゼミは同じような興味・関心を持った集団といえるため、他者の成果が自分の研究に役立つ可能性も高い。したがって、他者の研究発表に対しても興味を持って聞く姿勢が大切である。

このように、ディスカッションの際に発表資料を作成し、皆の前で研究発表を行うことで、(3)の文書作成能力、(4)のプレゼンテーションの能力を養うことができる。これらの積み重ねにより、卒論執筆、卒論発表の訓練を行う。加えて、実社会に出てからも資料作成、プレゼンテーションの機会は数多くあるため、ゼミ活動を通じてより多く経験することを期待している。

3.2. 発表内容

ディスカッションで発表すべき内容は、以下のとおりである。
(1) 研究内容と進捗報告
(2) 関連論文や書籍などの文献紹介
(3) プロジェクト活動やイベント企画など、教員が許可した内容

まず(1)は、ディスカッションの核を成すもので、現在の研究内容に関する報告である。次に(2)は、研究の位置付けを行うために必要な文献調査である。2年間のゼミ在籍期間で論文10本以上、書籍30冊以上を読むこと。論文はCiNii[4]で関連するものを検索でき、学内であれば自由に閲覧できるものもある。書籍は各自の関心や研究テーマに応じて、以下のものを推薦する。必要であれば適宜貸出を行う。(3)については、プロジェクト活動の進捗報告や協力要請、オープンキャンパスや翔風祭でのイベント企画などに関する内容である。なお、ディスカッション資料は、未発表の研究内容が含まれているため、内部資料とする。

<システム開発>
・Webシステムの開発技術と活用方法[5]
・基礎Ruby on Rails[6]

<ソーシャルメディア活用、個人・組織のブランディング>
・ソーシャルメディア実践の書[7]
・ソーシャルシフト[8]
・BEソーシャル![9]

<地域活性化>
・シティプロモーション[10]
・U理論[11]

<自己実現、働き方>
・7つの習慣[12]
・幸せがずっと続く12の行動習慣[13]
・ワーク・シフト[14]

3.3. 発表スケジュール

ディスカッションでは、毎週4~5名が研究発表を行う。現在、河野ゼミには24名の学生が所属しており、各自1.5ヶ月に1回のペースでの発表を目標とし、年間7回程度を目安とする。必要であれば何度発表しても構わない。むしろそのような姿勢は大いに歓迎する。ただし、前回からの進展がないものは、発表の回数としては認めない。4年生から順次発表するため、3年生の発表は5月上旬頃の予定である。

毎回のディスカッションでは、座長が当日の司会進行、議事録の作成を担当する。座長は、次回の座長を指名し、次回の座長が発表者を募集する。

3.4. 資料の構成

ディスカッション資料の構成について説明する。まず第1章の「はじめに」では、研究の目的、活動内容、現在の進捗状況など、今回のディスカッションで議論したい内容を書く。それ以降の章では、「関連研究」、「提案手法」、「システム構成」、「研究の課題」などの項目を必要に応じて記述する。関連研究では、適宜文献を引用しつつ、自身の研究に関連する研究やサービスを調査し、その特徴や相違点を説明する。参考文献については、論文や書籍などを本文中で引用した上で、「参考文献」の項に列挙する。

提案手法、システム構成では、研究で開発するシステムについて説明する。説明の際は、システム構成図、データベース定義表など、適宜図表を加えて説明する。最後の「まとめ」では、今回の報告内容、次回までの課題などを説明する。

3.5. ディスカッションの進行

ディスカッションの進行ルールを以下に示す。

・ディスカッションの進行(発表者の指名、質問の募集、議事録作成)は座長が行う
・座長は議事録を作成し、「河野ゼミ」のFacebookグループで共有する
・座長は4~5名程度の発表者を確保する
 ※3名以上の発表者が集まらない場合は、座長自身が発表する
 ※発表者一人の持ち時間は、質疑応答を含めて30分~1時間程度とする
・発表者は資料を作成し(原則4ページ以上)、参加者全員に配布する
 ※発表者は必ず、参加者に対しての問いかけを発表内容に盛り込むこと
 ※参考文献を適宜引用する
 ※研究室のプリンタで印刷し、コピー機で人数分をコピーする
 ※紙の節約のため、2ページ/枚で両面印刷にする
・参加者は、各自1回は質問すること

4. サブゼミ

サブゼミは学年別に1時間程度の時間を設けて実施する。各自、以下の内容を教員とゼミ生に報告する。各自の成果と目標の確認を他のゼミ生が証人となって行う。以下の報告とディスカッションの出席をもって、その週の出席とする。

<報告事項>
・先週からの成果報告
・目標達成度に対する自己評価(5段階)
 5:目標に基づいた活動ができ、目標に対する達成度が極めて高い
 4:目標に基づいた活動ができ、目標が概ね達成できた
 3:目標に基づいた活動ができた
 2:目標に基づいた活動を行ったが、目標に対する達成度が不十分で、改善すべき点が多い
 1:目標に基づいた活動ができず、目標に対する達成度が不十分
・来週までの目標設定

5. 学会発表のススメ

ゼミ生には学会での研究発表を強く推奨する。日頃の研鑽の成果を発表し、外部の研究者との交流の機会を持つことは貴重な経験になる。また、就職活動での自己PRや社会人になってからの仕事にも大いに活かすことができる。参考までに河野の学会活動スケジュールを以下に示す。

・サイバーワールド研究会
 幹事として研究会運営
・社会情報学会
 研究発表と論文投稿
・教育システム情報学会
 研究発表と論文投稿

※ゼミで配布した資料には、上記に河野の具体的な学会活動スケジュールが記載されていますが、未発表の研究テーマが含まれるため内部資料とします。

6. 成績評価について

卒業研究・卒業論文の成績評価について説明する。成績は、最終的な成果物である卒論・最終レポートの内容をベースに、研究の進展、ゼミの参加状況、学会発表などを加味して総合的に評価する。特に学会発表は大きく加点する(目安として成績1~2段階UP)。なお、ゼミの欠席は減点とする。

卒論には、以下の3つの要素が書かれていなければならない。学術の世界では、これらの要素によって論文の価値が評価される。

新規性:新しい技術や知見など、世の中で誰も明らかにしていないこと
有効性:提案内容が従来のものと比較して優れていること
信頼性:実験結果や得られた知見の根拠が信頼できるものであること

上記のうち、最も重要な要素は『信頼性』である。どれ程大きな成果であっても、同じ手順で他者が再現できなければ価値はない(再現性の問題)。実験の結果に有意差があったかを統計手法を用いて評価する(有効性の検証)。加えて、論理構造が明確な読みやすい文章、正確な情報提示を意識する。

<ゼミの出欠評価>
・2/3以上の出席が評価の対象となる。
 ※遅刻、欠席の連絡は、ディスカッション開始10分前までに行うこと(直前の場合は電話で連絡)
 ※欠席の場合は、正当な理由を事前に申し出ること
 ※以下の期間中は公欠扱いとする。ただし、目標の発表回数はきちんと満たすこと
   対象となる期間:インフルエンザ等による出講停止、教育実習期間、忌引、その他教員が認めたもの

7. まとめ

今回は河野ゼミのガイダンスを行った。具体的には、河野ゼミの方針とゼミ訓、ディスカッションとサブゼミの説明、成績評価について説明を行った。来週からは本格的にディスカッションを開始する。

参考文献

[1] ^ 河野義広,“「穏やかに楽しく生きる」研究者のブログ”,http://www.yoshihirokawano.com/
[2] ^ 河野義広,“アカデミックが見た社会”,http://blog.marketing.itmedia.co.jp/yoshi_kawano/ 
[3] ^ 河野義広,“河野ゼミの研究方針2013年”,「穏やかに楽しく生きる」研究者のブログ,
[4] ^ CiNii,http://ci.nii.ac.jp/
[5] ^ 速水治夫,服部哲,大部由香,加藤智也,松本早野香,“Webシステムの開発技術と活用方法”,共立出版,2013.3.
[6] ^ 黒田努,佐藤和人,“改訂新版 基礎Ruby on Rails”,インプレスジャパン,2012.3.
[7] ^ 大元隆志,“ソーシャルメディア実践の書 Facebook・Twitterによるパーソナルブランディング”,リックテレコム,2011.6.
[8] ^ 斉藤徹,“ソーシャルシフト―これからの企業にとって一番大切なこと”,日本経済新聞出版社,2011.6.
[9] ^ 斉藤徹,“BEソーシャル!―社員と顧客に愛される5つのシフト”,日本経済新聞出版社,2012.11.
[10] ^ 河井孝仁,“シティプロモーション-地域の魅力を創るしごと-”,東京法令出版,2009.12.
[11] ^ C・オットー・シャーマー,“U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術”,英治出版,2011.11.
[12] ^ スティーブン・R・コヴィー,“7つの習慣-成功には原則があった!”,キングベアー出版,1996.12.
[13] ^ ソニア・リュボミアスキー,“幸せがずっと続く12の行動習慣”,本実業出版社,2012.2.
[14] ^ リンダ・グラットン,“ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉”,プレジデント社,2012.7.


以上が2014年度 河野ゼミのガイダンス資料です。これをベースにゼミでの研究活動を推進していければと思っています。大変長くなりましたが、ここまで読んでくださった方の参考になれば幸いです。それでは、次回もよろしくお願いいたします。