2012年3月6日火曜日

研究者の仕事:論文を書くということ

私の職業は大学教員です。大学教員の主な仕事は、「教育」と「研究」です。教育には、講義を行うだけでなく、ゼミや研究を通じて学生を指導し、社会に貢献できる人材を育成するという目的があります(偉そうなことをいっていますが、私もまだまだ勉強中です)。自分自身の生き方を自らの行動で示していければよいと考えています。


<研究機関としての大学>
一方、大学は研究機関でもあるので、研究成果を上げる必要があります。一般にはあまり知られていないかも知れませんが、大学は教育半分、研究半分であるため、授業と会議以外の時間は、各教員の裁量で研究活動を含む自由な活動に充てることができます。そこで大学教員の受け持つ授業のコマ数を調べてみると、平均で週5コマ(1コマ90分)のようです。私の場合、週8コマ(12時間)で週の3分の1が授業となりますので、平均よりは幾分多いですね。

この授業や会議以外の自由な時間を使って研究を行い、学会発表や論文執筆を行う必要があります。大学教員は発表した論文数とその内容によって評価され、業績に応じて昇進(助教→准教授→教授など)する仕組みです。そこで今回は、論文を書くことについて説明します。

<論文の3要素:新規性・有効性・信頼性>
論文を書くには、『新規性』『有効性』『信頼性』の3要素が必要不可欠です。詳細は、「科学技術論文の書き方」を参照して頂くとして、ここでは簡単に紹介します。

新規性:新しい技術や知見など、世の中で誰も明らかにしていないこと
有効性:提案内容が従来のものと比較して優れていること
信頼性:実験結果や得られた知見の根拠が信頼できるものであること

上記3要素を満たすべく執筆した論文は、学会に投稿すると有識者によって査読され、それらすべてが満たされていると判断されれば、論文誌に掲載されることになります。論文の投稿後、査読を受け掲載されるまでには、半年~1年ほど時間が掛かるため、非常に時間の掛かる大仕事といえます。

<ソーシャルメディアで得られた知見を発信>
ここからは、私の研究に関する話です。現在、私はソーシャルメディアを使って得られた経験、知見などを積極的に発信・公開しているつもりです。その理由は、自分の持っている情報を公開し、より多くの人に知ってもらうことで、その情報が皆さんのお役に立てばよいと考えるためです。一方、これまで私が行ってきた技術の新しさを求める研究であれば、得られた知見を公開することで公知の事実となってしまい、そこに研究としての新しさはなくなってしまいます。

しかしながら、ここで私が得た知見というのは、世の中で知る人はそれほど多くないものの、確実に知る人はいると思われる情報です(書籍、講演資料などで発表もされているものもあります)。

私の研究の本質は、これらの知見を発信していくことで、人々(特に学生)の意識や行動がどのように変化したかを評価することにあります。したがって、こうやってブログを書くことも研究の一環ですし、これらの情報を公開しても研究の新規性がなくなる訳ではないと考えています。

それでは、ご意見、コメントなどありましたら、よろしくお願いいたします。