2017年4月5日水曜日

2017年度 河野ゼミ ガイダンス資料

皆さん、こんにちは。久しぶりの更新となってしまいました。

情報大に着任して7年目ですね。先日の卒業式で第5期のゼミ生を送り出すことができました。それでは昨年に引き続き、2017年度の河野ゼミ ガイダンス資料を紹介します(参考:2016年度 河野ゼミ ガイダンス資料)。毎年反省点を活かしてゼミの方針を打ち出すようにしていますが、なかなか思うようにはいかないものです。

今年度は新たに、「IT勉強会」「メンター制度」「ゼミ合宿で学会参加」の3つの取り組みを導入し、教育研究活動を推進していく予定です。


1. はじめに

河野ゼミでは、「サイバーワールド~分散仮想環境におけるヒューマンコミュニケーション~」をテーマに研究を進める[1][2]。2015年度までは「ソーシャルメディアとその社会的影響」のテーマで進めていたが、2016年度以降はシステム開発に重点を置きつつ、社会的課題をITで解決する「社会情報学」を専攻する[3]。ソーシャルメディアやクラウドサービスなどの技術は、あくまでも課題解決のための手段であり、真に解決すべき課題は社会の中に存在する。河野ゼミのは、人や地域、組織における社会的課題をITで解決することにある(図1)。

上記社会的課題は、様々な要因が相互に影響するため、システム開発だけでなく、関わる人々の役割分担や運用支援を含めた総合的な解決策が必要となる。これらを踏まえ、ゼミでは「情報技術を駆使し、人や地域の課題解決に貢献するため、主体的な行動ができる人材」を目指す。情報技術を駆使できるためには、システム開発やセキュリティ技術、情報リテラシーなど、現代実学主義に沿った実践が不可欠である。これらの過程で修得した専門知識・技術を駆使し、人や地域が抱える課題に取り組む。この活動を通じて、主体的な行動習慣を身に付け、他者と協調する姿勢を育み、創造的な解決策を見出す力を養うことができると考える。

ゼミは3、4年合同のディスカッション、プロジェクト毎のサブゼミをそれぞれ週1回行う。ディスカッションとは、毎週3~5名程度が研究発表を行い、全員で議論を行う形式のゼミである。ここでの議論、報告をもとにシステム開発、調査、論文執筆を行う。サブゼミでは、各自研究の進捗、今後の予定などを教員、他のゼミ生と共有する。そこでの報告をもとにディスカッション資料を作成する。

加えて、ゼミ生全員が集まるディスカッションでは、勉強会やワークショップ(体験型講座のこと)、ワールドカフェ(カフェ形式で複数人が議論し、学び合う場)、社会人講師による講演会などを不定期で開催し、毎月初回にはゼミ全員で月イチチャレンジを実施する。ゼミ生は、上記のゼミ活動に積極的に参加し、各自の能力向上に努めるものとする。

図1.河野ゼミの研究マップ


2. 教育方針

2.1. 河野ゼミ訓

目指すべき人物像と心構えとして「河野ゼミ訓」を以下に示す。実践できるよう、まずは心に留めておくこと。

1.ソーシャルであること
 周りの人達と協力して、活動をうまく進められること。ひとりでできないことをみんなでやる。ソーシャルメディアが使えることではない。
2.自分の頭で考えること
 まずは自分の頭で考えること。安易に答えを教えてもらおうとしない。自分で考えないと成長しない。
3. 行動すること
 頭で考えるだけではなく、実際に行動を起こして初めて意味がある。行動の結果は選ぶことはできないが、どう行動するかは自分で選択することができる。とにかく行動すること。
4. スキルを磨くこと
 心構えだけでなく、自分の強みとしてのスキルを磨くこと。プログラミング、デザイン、ライティング、プロジェクトマネジメント、リサーチなど、いろいろある。
5. 誠実であること
 相手に対しても自分に対しても誠実であること。相手のことを理解してから、初めて自分のことも理解される。お天道様に顔向けできないことはしない。


2.2. 河野ゼミで学べる技術

本ゼミで学べる技術を図2に示す。プロジェクト研究や卒業研究にて、PHP、Ruby、JavaScript、MySQLによるWebシステム、CMS(Content Management System)を利用したWebサイト構築などのWeb開発技術、TwitterやFacebookのAPIを利用したソーシャル連携サービス、OSM(OpenStreetMap)やYOLP(Yahoo! Open Local Platform)を利用した地図情報サービス開発などの技術を学ぶ機会が得られる。


図2.河野ゼミで学べる技術


2.3. IT勉強会

本ゼミでは、特にWeb技術を中心としたIT勉強会を組織する。各自、下記6勉強会のいずれかに参加し(兼務可)、切磋琢磨しながら自身のスキルを向上させるとともに、その成果をディスカッションにて他の学生に還元すること。図3のラーニングピラミッドにあるように、勉強会での成果を講師として他の学生に「教える」ことで知識の定着を目指す。なお、各勉強会の構成人数は3~5名を目安に調整し、適宜統廃合する。


図3.ラーニングピラミッド

<IT勉強会のリスト(案)>
フロントエンド勉強会:HTML, CSS, JavaScriptを中心としたユーザ目線でのWeb技術
 ・ jQuery, レスポンシブWebデザイン
 ・ フレームワーク(AngularJSとか)
 ・ データビジュアライゼーション(D3.js, jqPlotとか)
 ・ ブラウザゲーム(enchant.js, Ajaxとか)
 ・ ユーザエクスペリエンス(UX)デザイン
サーバサイド勉強会:PHP, Ruby, Python, DBなどを駆使するサーバサイドの開発技術
 ・ フレームワーク(Ruby on Rails, MEANなど)
  ※MEAN: MongoDB, Express.js, AngularJS, Node.jsの頭文字を取ったJSフレームワーク
 ・ Node.js, Express.js
 ・ Vagrant, Docker, AWS(Amazon Web Services), Microsoft Azureなど仮想化関連技術
 ・ NoSQL(キーバリューストア、ドキュメント指向データベース)
  MongoDB, BigTable, HBase, Redisなど
 ・ Web APIの開発
マッシュアップ勉強会:各種Web APIを組み合わせたシステム開発
 ・ ソーシャルログイン(Twitter, Facebookでのログイン)、Web APIの調査
 ・ Google Maps, OSMなどの位置情報系
 ・ Facebook Graph API, LinkedInなどのソーシャル係
 ・ オープンデータ(Linked Open Data, SPARQLなど)
 ・ RESAS(地域経済分析システム) APIを活用したビジネスアプリ開発
モバイルアプリ勉強会:スマホ、タブレットのアプリ開発に特化した勉強会
 ・ ネイティブアプリ:Android Studio, Xcode, Swift, Objective-Cなど
 ・ Webアプリ:Monaca, PhoneGap, jQuery UI, jQuery Mobileなど
Webサービス勉強会:Webサービスの活用を中心とした勉強会
 ・ ソーシャルメディア、Webサービス調査
 ・ クラウドサービス、クラウドソーシング、クラウドファンディング
  Evernote, Dropbox, Office 365, ランサーズ, CAMPFIREなど
 ・ コミュニケーションツール(Slack, ChatWork, Chatter, Yammer, co-meeting)
 ・ グループウェア(サイボウズLive!)、プロジェクト管理(Redmine)、コード管理(GitHub)
 ・ CMS(WordPress, Moodle, Mahara, Joomla!など)、Webサイト運用、マーケティング
プログラミング教育勉強会:効果的なプログラミング教育方法を探る勉強会
 ・ Java、オブジェクト指向、GUIプログラミングを理解するための動画コンテンツ作成
 ・ 作成したコンテンツはプログラミング応用a,bの授業で利用予定
 ・ アクティブ・ラーニング(能動的学習)を取り入れた授業設計
 ・ 全体統括は河野、プログラミングに苦手意識を持つ学生や教育に関心のある学生向け

各ゼミ生は、上記勉強会のいずれかに所属し、メンバーと協力して関連分野の知識・技術を深めながら、その成果をディスカッションで発表する。発表の際は、メンバーの1名を主担当とし、他の学生はサポート役に徹する。発表後は、説明資料をゼミ内のファイルサーバ(NAS)に保管する。発表時間は45~90分程度とし、必ず何かしらの作業・体験が含まれる内容にすること。各自1回は講師を経験することになる。

2.4. 月イチチャレンジ

各自の成長を目的とし、「月イチチャレンジ」を実施する。月イチチャレンジでは、毎月初回のゼミで各自が1ヶ月のチャレンジを宣言し、次の月にその達成度を評価する。設定するチャレンジは、自身の成長につながるもの、かつ達成度が評価できるものであれば何でもよい。例えば以下のものがある。
  • 勉強:読書、資格勉強、毎週授業の課題を提出する
  • スキル:新しいプログラミング言語にチャレンジ、Webサイト作成、サーバ構築
  • 生活面:毎朝何時に起きる、毎日ゼミ室に来る、欠席・遅刻しない
  • コミュニケーション:挨拶をする、人の話を聞く、相手を否定しない
  • 心構え:ポジティブな言葉(~したい)を使う、ネガティブな言葉(でも、どうせ、だって)を使わない

2.5. メンター制度

3年生のゼミ加入後の円滑な導入、4年生の卒論の進展、3・4年生間の交流を目的とし、「メンター制度」を採用する。3年生はメンター(師匠)とする4年生に付いて学習を進めるとともに、4年生はメンティー(弟子)の協力を得て研究を深めていく。メンター、メンティーのマッチング方法は以下のとおりである。
  1. 5月上旬頃までのディスカッションで4年生が研究発表を行い、3年生はメンターの4年生を選ぶ
  2. メンターとして指名された4年生は、原則その申し出を断ることはできない
    ただし、2名以上のメンティー希望者がいた場合は、3名を上限としてメンティーを選んでよい
  3. メンティー希望から外れてしまった3年生は、残りの4年生からメンターを再度選ぶ
  4. すべての3年生にメンターが付くまで2、3を繰り返す
    ※ メンティーが付かない4年生はいてもよい

3. 研究方針

3.1. ミッション

ゼミ生には学会発表を目標に研究活動を進めて欲しい。学会発表は、自身の研究について他大学の研究者や学生から意見を得られるだけでなく、就活時の自己PRや仕事にも役立つチャレンジである。年数回のチャンスがあるので、特に新規性の高い研究テーマに取り組む学生は積極的に発表して欲しい。意欲の高い学生には学会発表の機会を提供し、大学院への進学を推奨する(過去3名が学会発表を経験。大学院進学者はなし)。研究活動を通じ、情報収集・発信力、論理的思考力、プレゼンテーション力を養う。

3.2. 卒論スケジュール

ゼミ配属から卒業までの流れを以下に示す。

<3年次:プロジェクト研究>
1. 4月:ゼミ配属、プロジェクト研究の選択
 ・参加プロジェクトは、以下の3テーマから選択
  サイバーセキュリティ、地域活性化Webシステム、なりたい自分でつながるソーシャルメディア
 ・適宜ゼミでは、ワールドカフェや社会人による講演を企画
2. 5月:ディスカッションで初めての発表
 ・論文、書籍を読んで内容を発表する(適宜ディスカッションでは文献紹介を行うこと)
3. 6月~7月:プロジェクト研究の活動を進める
 ・フィールドワーク(こどものまち、地域のお祭りなど)やシステム開発を本格始動
 ・サイバーワールド研究会、教育システム情報学会などを聴講
4 .8月~9月:夏休み、ゼミ合宿
 ・研究を進める絶好のチャンスなので、ここでどれだけ頑張れるかが勝負!
5. 10月:卒論テーマの検討
 ・そろそろ卒論テーマを考えておく ※基本は、プロジェクト研究の発展で考えるのがよい
6. 11月~12月:プロジェクト研究中間報告
7. 1月:プロジェクト研究報告書の提出
8. 2月:卒論テーマの決定
9. 3月:春休み、就活開始
 ・卒論100%、就活100%の力で頑張る ※プロジェクト研究の成果物があると就活で有利
 ・学会でプロジェクト研究の成果を発表する

<4年次:卒業論文>
10. 4月:いよいよ最終年度、就活も卒論も100%で頑張る!
 ・卒論のテーマについて、ゼミ内で3年生にプレゼン
11. 5月~6月:卒論テーマについてディスカッションを重ねる
12. 7月:システム開発、調査を進める
13. 8月~9月:夏休み、ゼミ合宿
 ・この時期くらいまでに就活が決まっているとよい
 ・システム開発を本格的に始める
14. 10月:学生生活も残り半年、悔いのないように研究を進める
15. 11月:卒論中間発表会
 ・この時点で基本的にシステム開発調査は終わっていること
  ※ 例年、この時期に何もできていない学生がいるが、かなり厳しい卒論スケジュールになる
 ・教員からOKをもらった学生は、卒論を執筆してよい
  ※ NGの場合は、OKをもらえるまでディスカッションで発表を繰り返す
16. 12月:卒論初稿提出
 ・ 卒論チェックリストクリアした状態で提出すること
17. 1月下旬:卒論提出
 ・無事に提出できた学生は、卒論発表の準備を進める
  ※ 研究の成果が全く確認できない場合は留年もう1年頑張る
18. 2月上旬:卒論発表会
 ・教員からOKをもらった学生は、卒論データを提出して完了
  ※ 軽微な修正の場合は、教員からOKをもらえるまで卒論の修正を繰り返す
  ※ 大幅な修正が必要な場合は、一旦「不可」とし、卒論再提出期限まで心を入れ替えて頑張る
  ※ 無事に乗り越えた人は卒業まで新生活の準備
 ・優れた成果があった学生は学会発表を行う
19. 3月上旬:卒論再提出期限
 ・最後の最後で頑張れずNGとなった場合は留年もう1年頑張る
20. 3月下旬:卒業式
 ・みんなで無事に卒業できること

3年次のプロジェクト研究から、4年次の卒論提出までの具体的な目標(マイルストーン)を図4に示す。プロジェクト研究と卒業研究の共通点は多い。ただし、4年生は研究テーマがある程度決定しているため、早期にシステム開発や解決策実施に着手し、開発や評価に多くの時間を割くことができる。なお、3年生は、1月末のプロジェクト研究報告書の提出後、新年度のゼミ再開までの2ヶ月間も自主的に研究を進めておくこと。この期間に、就活の準備を進めると同時に、研究の位置付けやシステム設計ができるとよい[4]

図4.研究のマイルストーン

3.3. 学会発表とゼミ合宿

ゼミ生には学会での研究発表を強く推奨する。日頃の研鑽の成果を発表し、外部の研究者との交流の機会を持つことは貴重な経験になる。加えて、就職活動の自己PRや就職後の仕事にも活かすことができる。そこで夏から秋頃に実施予定のゼミ合宿を兼ねて、ゼミ全員で学会に参加したい。ゼミ内から1~2名の代表者を選出し、代表者は学会での発表に向けて、システム開発や実験を進める。他のゼミ生は代表者の研究のブラッシュアップや実験に協力する。学会参加の流れは以下のとおりである。
  1. 参加する学会を決める(開催日・場所、申し込み締切、原稿締切を確認)
  2. 参加申し込み(通常は発表タイトルと概要のみ)
  3. 原稿提出(学会フォーマットをもとに原稿執筆。適宜設計や実験計画を記載。河野が全力で添削)
  4. 学会当日までは、ひらすらシステム開発+実験・考察+プレゼン資料作成
  5. 学会1週間前頃に発表練習
  6. 学会発表当日

関連学会の活動状況を以下に示す。まずは、以下の学会の論文誌を読むことを推奨する。
  • 教育システム情報学会(情報システムを活用した教育分野に関する学会)
    • テーマ:教育システム、e-learning、タブレット端末、学習支援、情報リテラシー
    • 年間6回の研究会、年会1回の全国大会
  • サイバーワールド研究会(ITの基盤技術と産業界の橋渡しを目指す研究会)
    • テーマ:Web、ソーシャルメディア、サイバーセキュリティ、CG・VR、遠隔教育
    • 年間4回(3月、6月、9月、12月)の研究会
  • FIT(情報科学技術フォーラム)
    • テーマ:IT全般、電子情報通信学会と情報処理学会の共催
    • 毎年9月に開催
  • 社会情報学会(「社会」と「情報学」をつなぐ学問分野に関する学会)
    • テーマ:ソーシャルメディア、地域活性化、政治、防災、インターネット依存
    • 毎年9月に全国大会
  • 日本精神保健社会学会(メンタルヘルスに関する学会)
    • テーマ:メンタルヘルス、遺伝的気質、依存
    • 毎年11月頃に学術大会・総会

3.4. 卒論執筆スキル

プロジェクト研究報告書、卒論の執筆に向けて、参考となる資料を以下に示す。「河野ゼミ」のFacebookグループから参照できるため、各自必ず確認しておくこと。
  • 卒論フォーマット
  • 卒論チェックリスト
  • 論文の書き方
卒論執筆の際は、卒論フォーマットを使用する。12月末の卒論初稿提出時には、卒論チェックリストの項目をすべてクリアした状態で提出すること。普段のディスカッション資料やサブゼミでの報告の際は、論文の書き方を参考に文章を書くこと。参考図書として、『レポート・論文・プレゼン スキルズ(石坂春秋著)』[5]をゼミ室に置いておくので、各自よく読んでおくこと。

加えて、論理的な文章を書くためには、論文を読むことが何よりも勉強となる。実際、これまでの学生の状況を省みると、卒論執筆の段階で文章能力が著しく乏しい学生が見られた。そこで、できる限り毎月1本以上の論文や書籍を読む習慣を付けることで、卒論執筆能力の向上に取り組む。読んだ文献の内容を文書にまとめて、ディスカッションかサブゼミで報告すれば、卒論の参考文献も充実する。

文献報告の際は、その文献が対象とした課題と解決策、自身の研究との相違点、研究の位置付けなどをまとめること。論文はCiNii[6]で関連するものを検索し、学内であれば自由に閲覧できるものもある。もし見付からない場合は、大学の図書館で探すか、他の図書館から取り寄せられるか教員に確認すること。書籍は各自の関心や研究テーマに応じて、以下のものを推薦する。ゼミの蔵書管理システムを利用し、必要に応じて貸出する。きちんと取り組めば効果が出るため、自主的に取り組むことを期待する。

<システム開発>
・Webシステムの開発技術と活用方法[7]
・基礎Ruby on Rails[8]

<ソーシャルメディア活用、個人・組織のブランディング>
・ソーシャルメディア実践の書[9]
・ソーシャルシフト[10]
・BEソーシャル![11]

<地域活性化>
・シティプロモーション[12]

<自己実現、働き方>
・7つの習慣[13]
・嫌われる勇気[14]
・幸せがずっと続く12の行動習慣[15]
・ワーク・シフト[16]
・ライフ・シフト[17]


4. ディスカッション

4.1. ディスカッションの意義

ゼミ活動の中でも特に、ディスカッションは重要である。自身の研究成果を発表するだけでなく、他者の発表を聞いてその研究内容を理解し議論することは、互いの研究をより進展させる上で非常に重要な役割を担っている。ディスカッションで活発な議論を展開することで、新しいアイディアが出てきたり、他者の研究成果を自分の研究に活かしたり、自身の知識が深まったりする。この時間は、必然的に他者の発表を聞く機会の方が多いことから、その時間をいかに活用できるかで自分の成長に大きく影響する。そこで、ディスカッションの目的を以下に示す。

(1) 研究活動の報告(研究の目的、現在の進捗、今後の課題など)
(2) 研究で得られた成果・知見の共有(最新動向、サービス展開、調査結果など)
(3) 文書作成能力の向上
(4) プレゼンテーション能力の向上

まず(1)について、自分の研究を他者に説明することにより、自分自身の中で研究の意義や課題などの理解を一層深めることができる。そのため、資料作成と発表の際は、他者に理解してもらえることを常に意識する。次に(2)について、研究で得られた成果や知見などをゼミ内で共有することで、それらが河野ゼミの知識として蓄積される。ゼミは同じような興味・関心を持った集団といえるため、他者の成果が自分の研究に役立つ可能性も高い。したがって、他者の研究発表に対しても興味を持って聞く姿勢が大切である。

このように、ディスカッションの際に発表資料を作成し、皆の前で研究発表を行うことで、(3)の文書作成能力、(4)のプレゼンテーションの能力を養うことができる。これらの積み重ねにより、卒論執筆、卒論発表の訓練を行う。加えて、実社会に出てからは資料作成、プレゼンテーションの機会が数多くあるため、ゼミ活動を通じてより多く経験することを期待している。

4.2. 発表内容

ディスカッションで発表すべき内容は、以下のとおりである。

(1) 研究内容と進捗報告
(2) 関連論文や書籍などの文献紹介
(3) プロジェクト活動やイベント企画など、教員が許可した内容

まず(1)は、ディスカッションの核を成すもので、現在の研究内容に関する報告である。(2)は、3.3節で示したように、研究の位置付けを行うために必要な文献調査である。2年間のゼミ在籍期間で論文10本以上、書籍20冊以上を読むこと。(3)については、プロジェクト活動の進捗報告や協力要請、オープンキャンパスや翔風祭でのイベント企画などに関する内容である。なお、ディスカッション資料は、未発表の研究内容が含まれているため、内部資料とする。

4.3. 発表スケジュール

ディスカッションでは、毎週3~5名が研究発表を行う。現在、河野ゼミには26名の学生が在籍しており、各自1ヶ月に1回のペースでの発表を目標とし、年間8~10回を目安とする。必要であれば何度発表しても構わない。むしろそのような姿勢は大いに歓迎する。ただし、前回からの進展がないものは、発表の回数としては認めない。加えて、発表資料や研究の進展に重大な欠陥がある場合、再発表を命じることがある。4年生から順次発表するため、3年生の発表は5月中旬頃の予定である。

毎回のディスカッションでは、座長が当日の司会進行、議事録の作成を担当する。座長は、次回の座長を指名し、次回の座長が発表者を募集する。

4.4. 資料の構成

ディスカッション資料の構成について説明する。まず第1章の「はじめに」では、研究の目的、活動内容、現在の進捗状況など、今回のディスカッションで議論したい内容を書く。それ以降の章では、「関連研究」、「提案手法」、「システム構成」、「研究の課題」などの項目を必要に応じて記述する。関連研究では、適宜文献を引用しつつ、自身の研究に関連する研究やサービスを調査し、その特徴や相違点を説明する。参考文献については、論文や書籍などを本文中で引用した上で、「参考文献」の項に列挙する。

提案手法、システム構成では、研究で開発するシステムについて説明する。説明の際は、システム構成図、データベース定義表など、適宜図表を加えて説明する。最後の「まとめ」では、今回の報告内容、次回までの課題などを説明する。

4.5. ディスカッションの進行

ディスカッションの進行ルールを以下に示す。

・ディスカッションの進行(発表者の指名、質問の募集、議事録作成)は座長が行う
・座長は議事録を作成し、「河野ゼミ」のFacebookグループで共有する
・座長は3~5名程度の発表者を確保する
 ※ 発表者が3名に満たない場合は、座長自身が発表する
 ※ 発表者一人の持ち時間は、質疑応答を含めて40分~1時間程度を目安とする
・発表者は事前に資料を作成し(原則4ページ以上)、参加者全員に配布する
 ※ 発表者は必ず、参加者に対しての問いかけを発表内容に盛り込むこと
 ※ 紙の節約のため、2ページ/枚で両面印刷とし、人数分をコピーすること
・参加者は、各自1回は質問すること

5. サブゼミ

プロジェクト毎のサブゼミは、それぞれ1時間程度で実施する。各自の成果と目標の確認を互いが証人となって行う。

<進め方>
・開始前までに進捗報告書を書いて、Dropboxの「週報」フォルダに提出しておくこと
・参加できない場合は、その週の内にゼミ室に来て進捗報告書を書くこと
・取り組んだ内容、来週までの目標は具体的に書くこと

<報告事項>
・先週からの成果報告
・目標達成度に対する自己評価(5段階)
 5:目標に基づいた活動ができ、目標に対する達成度が極めて高い
 4:目標に基づいた活動ができ、目標が概ね達成できた
 3:目標に基づいた活動ができた
 2:目標に基づいた活動を行ったが、目標に対する達成度が不十分で、改善すべき点が多い
 1:目標に基づいた活動ができず、目標に対する達成度が不十分
・来週までの目標設定

6. 成績評価について

成績は、ゼミの参加態度20%、ゼミでの発表30%、プロジェクト研究報告書/卒業論文50%で評価する。ただし、学会・研究会等での対外発表を行った場合は、成績に加味して評価する。特に学会発表は大きく加点する(目安として成績1~2段階UP)。なお、ゼミの欠席は減点とする。卒論には、以下の3つの要素が書かれていなければならない。学術の世界では、これらの要素によって論文の価値が評価される。

新規性:新しい技術や知見など、世の中で誰も明らかにしていないこと
有効性:提案内容が従来のものと比較して優れていること
信頼性:実験結果や得られた知見の根拠が信頼できるものであること

上記のうち、最初に問われる要素は新規性である。世の中で誰も成し得ていないかを証明するには、様々な文献を調査し、自身の研究の位置付けを行う必要がある。次の有効性を検証するには、実験の結果に有意差があったかを統計的手法を用いて評価する必要がある。最後の信頼性は最も重要な要素である。どれ程大きな成果であっても、同じ手順で他者が再現できなければ価値はない(再現性の問題)。加えて、論理構造が明確な読みやすい文章、正確な情報提示を意識する。

7. まとめ

今回は、河野ゼミの教育研究活動の方針を伝えた。本資料に従って1年間活動を進められるよう、熟読の上、各自保管しておくこと。

参考文献

[1] ^ 河野義広,“「穏やかに楽しく生きる」研究者のブログ”,http://www.yoshihirokawano.com/
[2] ^ 河野義広,“アカデミックが見た社会”,http://blog.marketing.itmedia.co.jp/yoshi_kawano/ 
[3] ^ 河野義広,“河野ゼミの研究方針2013年”,「穏やかに楽しく生きる」研究者のブログ,
[4] ^ 河野義広,“就職活動と卒業研究の相乗効果”,「穏やかに楽しく生きる」研究者のブログ,
[6] ^ CiNii,http://ci.nii.ac.jp/
[7] ^ 速水治夫,服部哲,大部由香,加藤智也,松本早野香,“Webシステムの開発技術と活用方法”,共立出版,2013.3.
[8] ^ 黒田努,佐藤和人,“改訂新版 基礎Ruby on Rails”,インプレスジャパン,2012.3.
[9] ^ 大元隆志,“ソーシャルメディア実践の書 Facebook・Twitterによるパーソナルブランディング”,リックテレコム,2011.6.
[10] ^ 斉藤徹,“ソーシャルシフト―これからの企業にとって一番大切なこと”,日本経済新聞出版社,2011.6.
[11] ^ 斉藤徹,“BEソーシャル!―社員と顧客に愛される5つのシフト”,日本経済新聞出版社,2012.11.
[12] ^ 河井孝仁,“シティプロモーション-地域の魅力を創るしごと-”,東京法令出版,2009.12.
[13] ^ スティーブン・R・コヴィー,“7つの習慣―個人、家庭、社会、人生のすべて 成功には原則があった!”,キングベアー出版,2008.8.
[14] ^ 岸見一郎,古賀史健,“嫌われる勇気”,ダイヤモンド社,2013.12.
[15] ^ ソニア・リュボミアスキー,“幸せがずっと続く12の行動習慣”,本実業出版社,2012.2.
[16] ^ リンダ・グラットン,“ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉”,プレジデント社,2012.7.

[17] ^ リンダ・グラットン,アンドリュー・スコット,“LIFE SHIFT(ライフ・シフト)”,東洋経済新報社,2016.10.

以上が2017年度 河野ゼミのガイダンス資料です。これをベースに教育研究活動を推進していきます!よろしくお願いいたします。